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新型インフルエンザで休業、企業に休業手当の支払義務があるか

(財)労務行政研究所のアンケートによると、従業員の家族が新型インフルエンザに感染した場合、「保健所の判断がなくても原則として自宅待機とする」としている企業が3分の1に上り、うち1割強は休業手当を支払わない、と回答。労働基準法に抵触する恐れがある、としています。

 

以上は、昨日の日経新聞社会面に掲載された記事ですが、同記事は、厚生労働省労働基準局監督課の「本人が発症していないのに休ませるならば、最低でも休業手当の支給は必須」との指摘を記載しています。

労働基準法26条によれば、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」とされているところではありますが、果たして新型インフルエンザによる休業が、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当するのかどうか、という問題があります。

1.従業員本人が感染した場合
(1) 感染症法に基づいて都道府県知事による休業・入院等の勧告がなされた場合には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当せず、休業手当の支払い義務は生じません

(2) 都道府県知事による勧告が無かった場合にも、労働安全衛生規則により病毒伝播の恐れのある者の就業禁止が求められているため、やはり、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当せず、休業手当の支払い義務は生じません

2.従業員の家族が新型インフルエンザに感染した場合
(1) 感染症法に基づいて、都道県知事に、当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の当該感染症の感染の防止に必要な協力を求めることがなされた場合には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当せず、休業手当の支払い義務は生じません

(2) 都道府県知事による要請がなく、企業が自発的に従業員に休業を命じた場合には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当の支払い義務は生じることになりそうです。

ただし、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由による債務不履行」とまでは言えないため、100%の賃金を保障する必要はなく、労基法26条による60%の保障で済みます。

新型インフルエンザ対策として、感染した従業員自身・同僚・同居家族に感染者が出た場合・感染地域からの帰任者等を休業させた場合の給与の取扱い、事業継続計画に基づく人員体制等を就業規則に規定する必要があります。

参考条文
労働基準法

(休業手当) 
第二十六条  使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

民法
(債務者の危険負担等) 
第五百三十六条  前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。 

  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。 

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
(就業制限) 
第十八条  都道府県知事は、一類感染症の患者及び二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者又は無症状病原体保有者に係る第十二条第一項の規定による届出を受けた場合において、当該感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該者又はその保護者に対し、当該届出の内容その他の厚生労働省令で定める事項を書面により通知することができる。 

  前項に規定する患者及び無症状病原体保有者は、当該者又はその保護者が同項の規定による通知を受けた場合には、感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務として感染症ごとに厚生労働省令で定める業務に、そのおそれがなくなるまでの期間として感染症ごとに厚生労働省令で定める期間従事してはならない。 

  前項の規定の適用を受けている者又はその保護者は、都道府県知事に対し、同項の規定の適用を受けている者について、同項の対象者ではなくなったことの確認を求めることができる。 

  都道府県知事は、前項の規定による確認の求めがあったときは、当該請求に係る第二項の規定の適用を受けている者について、同項の規定の適用に係る感染症の患者若しくは無症状病原体保有者でないかどうか、又は同項に規定する期間を経過しているかどうかの確認をしなければならない。 

  都道府県知事は、第一項の規定による通知をしようとするときは、あらかじめ、当該患者又は無症状病原体保有者の居住地を管轄する保健所について置かれた第二十四条第一項に規定する協議会の意見を聴かなければならない。ただし、緊急を要する場合で、あらかじめ、当該協議会の意見を聴くいとまがないときは、この限りでない。
 
  前項ただし書に規定する場合において、都道府県知事は、速やかに、その通知をした内容について当該協議会に報告しなければならない。

(入院) 
第十九条  都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対し特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関に入院し、又はその保護者に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院若しくは診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院し、又は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。 

  都道府県知事は、前項の規定による勧告をする場合には、当該勧告に係る患者又はその保護者に対し適切な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならない。 

  都道府県知事は、第一項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、当該勧告に係る患者を特定感染症指定医療機関又は第一種感染症指定医療機関(同項ただし書の規定による勧告に従わないときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院又は診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるもの)に入院させることができる。 

  第一項及び前項の規定に係る入院の期間は、七十二時間を超えてはならない。 

  都道府県知事は、緊急その他やむを得ない理由があるときは、第一項又は第三項の規定により入院している患者を、当該患者が入院している病院又は診療所以外の病院又は診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院させることができる。 

  第一項又は第三項の規定に係る入院の期間と前項の規定に係る入院の期間とを合算した期間は、七十二時間を超えてはならない。 

  都道府県知事は、第一項の規定による勧告又は第三項の規定による入院の措置をしたときは、遅滞なく、当該患者が入院している病院又は診療所の所在地を管轄する保健所について置かれた第二十四条第一項に規定する協議会に報告しなければならない。

(感染を防止するための協力) 
第四十四条の三  都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に対し、当該感染症の潜伏期間を考慮して定めた期間内において、当該者の体温その他の健康状態について報告を求めることができる。 

  都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定により報告を求めた者に対し、同項の規定により定めた期間内において、当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の当該感染症の感染の防止に必要な協力を求めることができる。

労働安全衛生規則
第六十一条
  事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、第一号に掲げる者について伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。 
  病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者 
  心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者 
  前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかつた者 

  事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。

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