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沼田の感性の記事一覧

第181回 沼田の感性

成功経営者の8つの共通要因(5)
 ~4月16日の大久保道場にて~

 4月16日の大久保道場の最終レポートです。「5年、10年スパンの戦略」「共鳴するパートナーを得る」「権限委譲と部下の育成」「柔軟な心」に続き最後は「神を信じ他人の幸せを考える」です。成功経営者の共通要因は、必ずしも大久保会長ご自身の経営手法と一致しないそうです。そして「ここが○○社長との差です」という語り口が会場の笑いを誘います。

 話は飛びますが、7月22日閣議提出の「経済財政白書」によれば、日本経済はこれから試練のときを迎えそうです。サブプライムローン問題に揺れる米国経済と原油・原材料価格の高騰を短期リスク、少子高齢化に伴う財政の負荷を長期リスク、そして企業も家計もリスクを取らない傾向を中期リスクと指摘しております。
 資本主義は本来チャレンジングな制度です。いつの時代もルールや秩序に挑戦し新天地を目指すプレーヤーが出現します。こうしたプレーヤーは合法と違法の境界線上にビジネスモデルを構築し、既存のパラダイムを転換し、無人の荒野を突き進むが如く勝ち続ける場合があります。どこかで既存の秩序との衝突を経験しますが、ここを乗り越えたのがGoogleとすれば、跳ね返されたのがライブドアなのかもしれません。
 合法的なパラダイム転換が封じられ若者に「蟹工船」が流行する、なんて因果関係もあるのかもしれません。社会が挑戦を許容するには、精神的なバックボーンも必要なのかもしれません。

第五要因 神を信じ他人の幸せを考える
 経営経験が長くなると、「生かされている」「助けられている」という気持ちを感じるようです。この気持ちを恥ずかしがらずに率直に表現するのも成功経営者の共通点だそうです。社長室などに神棚を祭る経営者も多く見られます。ある会社では5月2日を「7大恩人の日」として休日とし、生存されている創業来の恩人に感謝を示すのだそうです。
 また成功経営者は純粋な気持ちで他人の幸せ、社会への貢献を考えているといいます。

 このテーマで私が思い浮かぶのは「メザシの土光」こと土光敏夫氏(元経団連会長、元東芝会長)です。朝夕に法華経(かなり長いお経です!)を読誦し、経営者として感謝と仏の道に外れぬ生き方を日々誓われたと聞きます。私生活では質素倹約(応接間にはエアコンが無かったそうです)、公的活動では公益への奉仕を徹底され、宗教関係者からの講演依頼には「ワシの南無妙法蓮華経は、自分だけのもの。人に語り継ぐものではない。」と断られるのが常とのこと。金儲けに走る仏教界にも苦々しい思いを持たれていたようです。
 土光氏ですら疑獄事件で拘留されたご経験があります。まっすぐに生きる事は成功を保証するものではありません。経済が下り坂を迎えた今、上を目指す時代に忘れてしまった何かを取り戻す時期なのかもしれません。
 大久保道場の最後のレポート、かなり脱線してしまいました。申し訳ありません。


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第180回 沼田の感性

成功経営者の8つの共通要因(4)
 ~4月16日の大久保道場にて~

 引き続き4月16日開催の大久保道場のレポートです。8つの共通要因の第一要因は「5年、10年スパンの戦略」、第二要因は「共鳴するパートナーを得る」、第三要因は「権限委譲と部下の育成」でした。第四要因は「柔軟な心」です。(紙面の関係、参加者メリットを考え、私が若干編集しております!)
 7月17日の大久保道場は、メンバー相互で交流する機会を求める声に応え、夕刻からプライベートクラブ、「シティクラブ・オブ東京(http://www.cityclub.co.jp/)」での開催となりました。上級な環境をご提供いただき、誠に有難うございました。
 同クラブのマネージャーさまから「若手経営者だけでは勿体ない内容、クラブ・メンバーにもご案内できないか」と、大変ありがたいお言葉を頂きました。若手経営者にとっても、職業・年代が異なる富裕層の方々との交流は、学ぶものが多いと思います。皆様のご意見を伺いながら、面白い企画が生み出せればと一人ワクワクしております。

 第四要因 柔軟な心での経営
 「柔軟な心」の第一は「捨てられること」、思い入れのある事業でもダメなら捨てる、これが成功経営者の共通要因だそうです。捨てられないと重くなり、いずれ会社は動かなくなると言います。特に「きれいごと」を捨てられないトップは伸びません。中途半端に社会貢献を言うぐらいなら徹底的に稼いで、お金を社会に還元する「義賊」を目指すべきなのでしょう。マーケット以外に回答を求めると、趣味・オタクの会社に陥ります。
 第二は「こだわらないこと」、大目標にはこだわっても小さい目標にはこだわらない、最後に勝てば良いという姿勢が大切です。朝令暮改どころか必要なら朝令朝改で良いのです。一方で「神は細部に宿る」ともいいます。
「些事にはこだわらないが、疎かにもしない」のが経営の秘訣です。「見るとこだわってしまう」のが、大局観の無い社長の特徴なのです。
 ある会社の社員総会で、女子社員が涙ながらに「当社のサービスは準備不足で、顧客からのクレームが殺到している」と訴えたそうです。するとこの会社の社長は「君は何を言っているんだ、当社は今、革命を戦っている最中、この程度の問題で前進を止めるわけにはいかないんだ!」と檄を飛ばしたと
言います。コンプライアンスの観点からは問題のある話でしょうが、私はこの経営者の意気込み、こだわりを買いたいものです。
 第三は「イライラしないこと」、そのためには自社(自分)のスタイルやペースを知る事が重要です。常に敵は我にあり。自分の器の範囲で勝負をし、他人と比較せず見栄を張らない、というのが本当の勇気です。

 仏教では「悟りとは如実知自心(ありのままの自分の心を知ること)なり(大日経)」と言いますが、悔しい自分、不安な自分、惨めな自分、得意気な自分、その時々の「自分」と向き合い続ける事で、自ずと人生の最善手が打てるようになるのかもしれません。


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第179回 沼田の感性

成功経営者の8つの共通要因(3)
 ~4月16日の大久保道場にて~

 少し古い話になりますが、前回に引き続き4月16日開催の大久保道場をレポートします。成功経営者の8つの共通要因の中の第一要因は「5年、10年スパンの戦略」、第二要因は「共鳴するパートナーを得る」でした。第三要因は権限委譲と部下の育成を進展させる社長の心構えがテーマです。
 「心構え」といえば、5月21日の大久保道場では「成功する経営者の11つの内面の共通点」という講話が行われ、参加各社は2つの経営課題が出されました。一つ目は「自社のボトルネック、アキレス」。予め見えていれば冷静な対応が可能ですが、突発事態に右往左往すると求心力を失い会社の危機を招きます。二つ目は「顧客満足を高める具体的な施策」、顧客が見えていない経営者は即答できず、貴社のサービスはパーフェクトなのか?」と手厳しく叱られます。大久保道場は双方向ゼミ形式。早朝の清々しさで刺激を受け、経営脳を全開にします。

 第三要因 業務を任せて人を育てる
 成功経営者の共通要因の3点目は、「業務を部下に任せる」姿勢です。一旦は任せても事後に口を挟むと、部下はモノを考えなくなります。これは「仕事」では無く「作業」になってしまいます。かといって放置プレーでは、成果が上がらないばかりか不正の温床にもなりかねません。極意は「任せて、任せず」、権限を全面的に委譲しながら節目では確かなチェックを行う、これが成功経営者に共通の経営スタイルなのだそうです。
 経営者は自分にしかできない事だけを実行し、他の業務はすべて部下に任せるべきです。その結果伸びる会社の経営者ほど暇になります。「忙しい経営者は、お金も忙しい」と言います。考える時間もなければ緊急案件に対応する余裕もありません。したがって成長戦略も描けません。ルーティン・ワーク尽くしでは部下の成長も無いのです。
 さらに経営者は業務を熟知しなければ、有効なチェックができません。チェックができない業務が、成長経営の死角となりやすい分野です。コンサルタントに依頼するにせよ、アウトソーシングを活用するにせよ、最終責任は経営者が負うしかありません。様々な業務を経験したジェネラリストが経営者として有利な部分かもしれません。

 権限委譲の方法を物語る教訓をご披露いたします。トップが新規営業のお膳立てをして、NO.2(部下)が細部のクロージングをする会社は伸びます。トップが営業をしない会社は有力な新規プロジェクトが乏しい会社、管理システムは整備されても、成長性には疑問符がつき、長い目で見ると環境変化に対応できない恐れもあります。逆にトップが営業の全プロセスに関わる会社は、目先の成果は出ても部下は育ちません。経営者個人の器が、会社の成長の限界となります。最後をトップがまとめてトップに花を持たせる会社は、部下は育つかもしれませんが、ルーティン案件から脱せず、成長軌道には乗り難いといいます。ちょっとした役割分担の違いが、会社や部下の成長速度を左右する、というのは興味深くもあり、経営者としては背筋がひんやりする講話でもありました。


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第177回 沼田の感性

成功経営者の8つの共通要因(2)
 ~4月16日の大久保道場にて~

 前回に引き続き大久保道場のレポートです。成功経営者の8つの共通要因の中の第一要因は「5年、10年スパンの戦略」、事務局から参加各社に早速「10年後の自社のイメージを発表するように」との宿題が出されました。
事務局は弊社社員が務めておりますが、肝心の私もまだ提出できておりません。弊社の企業ドメインは「社会のイノベーションと個人の自己実現の促進」を、「株式公開を軸にしたビジネス・インキュベーションにより実現すること」で、「日本国民すべてに、起業ノウハウとネットワーク(人脈)、そして資金を適切なタイミングで遍く提供するインフラを形成すること」が私たちの使命です。東京だけではなく日本全国に、最高レベルの起業インフラを構築したいと考えております。本当は10年以内に達成したい目標ですが、現実味の点でまだ自信がなく、参加各社にご披露できずに悩んでおりました。
 ではこの長期スパンでの経営戦略を具現化するための第二要因に行きましょう。

第二要因 共鳴するパートナーを得ること
 成功経営者の共通要因の2点目は共鳴するパートナーの存在、大久保会長は二人のパートナーの必要性を説きます。社内のNO.2と社外にパートナーです。(二つの要因に分けて話されたのですが、一つにまとめました。)
 まずは社内のNO.2、NO.2は部下ではなくパートナー、少なくとも代表権が渡せなければパートナーとは言えないそうです。また「3年、5年は馬鹿でも続く、10年、20年続けてはじめてパートナーだ」とも言われるので、パートナーの基準は高いようです。若い経営者にはビジネスで10年付き合う妙味や難しさは分からないかもしれませんね。とはいえ「共同経営はダメ」、上下関係は不可欠なのだそうです。
 唯我独尊の超カリスマ経営者もいつかコケます。トップが頑張り続ける間は会社も頑張れますが、トップがコケれば会社も一気に崩れます。ソニーやホンダの急成長期はNO.2が支えました。世間には知られてはいなくても、急成長を持続する会社には必ずNO.2がいるようです。トップが天才型ならNO.2は秀才型、世の中の人全員が社長をやりたい訳ではないので、成長企業を目指すなら「NO.2を徹底して探せ」ば結構見つかるものなのかもしれません。
NO.2は女房役、一緒に山には登りませんが、NO.2の自覚を持ち、トップと「合う」人間が望ましいようです。

 次に外部のパートナー、これもパートナーと言う以上、原則一人、多くても2名が限界、どうも単なるブレーン、コンサルタントとは重みが違う役割のようです。
 大きな経営判断は、同じ船に乗るNO.2には委ねられない事が多いと言います。外部から大局観を持ってアドバイス頂ける方が理想なのでしょうが、こちらの人選も難しそうです。順序から申し上げれば、まずNO.2が先なのでしょう。私たちも皆様の外部パートナーを目指したいとは思いますが、まだまだ皆様の声が聞き切れていない気がしております。

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第177回 沼田の感性

成功経営者の8つの共通要因(2)
 ~4月16日の大久保道場にて~

 前回に引き続き大久保道場のレポートです。成功経営者の8つの共通要因の中の第一要因は「5年、10年スパンの戦略」、事務局から参加各社に早速「10年後の自社のイメージを発表するように」との宿題が出されました。
事務局は弊社社員が務めておりますが、肝心の私もまだ提出できておりません。弊社の企業ドメインは「社会のイノベーションと個人の自己実現の促進」を、「株式公開を軸にしたビジネス・インキュベーションにより実現すること」で、「日本国民すべてに、起業ノウハウとネットワーク(人脈)、そして資金を適切なタイミングで遍く提供するインフラを形成すること」が私たちの使命です。東京だけではなく日本全国に、最高レベルの起業インフラを構築したいと考えております。本当は10年以内に達成したい目標ですが、現実味の点でまだ自信がなく、参加各社にご披露できずに悩んでおりました。
 ではこの長期スパンでの経営戦略を具現化するための第二要因に行きましょう。

第二要因 共鳴するパートナーを得ること
 成功経営者の共通要因の2点目は共鳴するパートナーの存在、大久保会長は二人のパートナーの必要性を説きます。社内のNO.2と社外にパートナーです。(二つの要因に分けて話されたのですが、一つにまとめました。)
 まずは社内のNO.2、NO.2は部下ではなくパートナー、少なくとも代表権が渡せなければパートナーとは言えないそうです。また「3年、5年は馬鹿でも続く、10年、20年続けてはじめてパートナーだ」とも言われるので、パートナーの基準は高いようです。若い経営者にはビジネスで10年付き合う妙味や難しさは分からないかもしれませんね。とはいえ「共同経営はダメ」、上下関係は不可欠なのだそうです。
 唯我独尊の超カリスマ経営者もいつかコケます。トップが頑張り続ける間は会社も頑張れますが、トップがコケれば会社も一気に崩れます。ソニーやホンダの急成長期はNO.2が支えました。世間には知られてはいなくても、急成長を持続する会社には必ずNO.2がいるようです。トップが天才型ならNO.2は秀才型、世の中の人全員が社長をやりたい訳ではないので、成長企業を目指すなら「NO.2を徹底して探せ」ば結構見つかるものなのかもしれません。
NO.2は女房役、一緒に山には登りませんが、NO.2の自覚を持ち、トップと「合う」人間が望ましいようです。

 次に外部のパートナー、これもパートナーと言う以上、原則一人、多くても2名が限界、どうも単なるブレーン、コンサルタントとは重みが違う役割のようです。
 大きな経営判断は、同じ船に乗るNO.2には委ねられない事が多いと言います。外部から大局観を持ってアドバイス頂ける方が理想なのでしょうが、こちらの人選も難しそうです。順序から申し上げれば、まずNO.2が先なのでしょう。私たちも皆様の外部パートナーを目指したいとは思いますが、まだまだ皆様の声が聞き切れていない気がしております。

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成功経営者の8つの共通要因(1)

成功経営者の8つの共通要因(1)
 ~4月16日の大久保道場にて~

 「ビジョナリーカンパニー(2)飛躍の法則」は経営者に愛読者が多い書物です。統計的結論が人間学とも重なり経営者は唸るのでしょう。「飛躍企業の経営者はカリスマ性が乏しく、個人的には謙虚である一方、職業人としての意思は強い」「最初に人を選び、それから目的地(事業)を選ぶ」とは見事です。
 大久保道場は株式会社フォーバルの大久保会長を講師に迎え、早朝に経営を学ぶ会です。4月16日(第三回目)の演題は「成功経営者の8つの共通要因」、大久保会長のご経験に基づき、8つの「飛躍の法則」の伝授を頂きました。大久保道場は会場の都合で希望者すべての受入が実現していません。
 そこで8つのうちの5つを、私の感想も交えてご報告申し上げたいと思います。正真正銘の共通要因は、機会がありましたら、大久保会長から直接伝授を受けて下さい。迫力が違います!

第一要因 5年、10年スパンの戦略
 経営者にインタビューで「10年後の姿」を伺うと、その会社の成長性が見えるそうです。良い経営者は10年刻みの目標をイメージしており、ダメ経営者は意識を今期の業績にのみ集中しているのです。ソフトバンクの孫社長は、28歳の時に「20年後にはインフラを持ちたい」と構想されていたそうです。中長期のビジョンが経営戦略ブレを抑え、経営の背骨を形成し、スケール感を醸し出すのでしょう。
 大久保会長によると、この第一要因は成功経営者にほぼ例外がないそうです。経営初期から心がけておくべきとの事でした。とはいえ創業時から10年後の自分をイメージできる社長はなかなかいないでしょう。苦労を積み重ねる中で、中長期的な視点の重要性が分かるのでしょう。
 私は事業計画を作成される社長に、まずマンダラ手帳の「人生百年計画」の作成をお勧めしております。人生の最終イメージと、概ね20年単位の成長イメージを過去・現在・未来に分類して書くのです。事業計画も人生の一部であり、人生を演出する重要な要素なのです。自分の人生と向き合えていない事業計画は、どこか説得力が乏しく空虚な印象を与えます。
 人生百年計画を立てると、自分の「あるべき姿」が見えます。あるべき姿が見えると無駄が排除され、決断スピードが速くなります。「誤った過去からの反逆」ともいえる緊急事態が徐々に減少していきます。短期的な目標は利害関係者の反発が尖鋭ですが、百年単位の目標には反発も先鋭化しません。
大きな目標を具体化するには、右往左往を繰り返し、思考を熟成する時間も必要です。足元の不安定に耐える精神力が試されるのです。
 会社にも「会社100年の計」が必要です。これが「経営理念」「社是・社訓」に現れます。大企業の経営理念を紐解くと、成長期は遠くを見ながら、近年は足元重視に変更される事例が散見されます。中長期スパンでの経営の難しさの証明なのでしょうが、これが我が国経済の現在の低迷の一要因なのかもしれません。

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ポストIPO時代のビジネス・インキュベーション

 少し前の話、英エコノミスト誌編集長のビル・エモット氏来日の際に、数分間名刺交換の機会を頂きました。その折に職業を質問され「IPOコンサルタント」と答えたところ、「ビジネス・インキュベーション?エクセレント!」と返されました。
 欧米では「ビジネス・インキュベーション(BI)」が一般的のようですが、私は若干違和感を覚えました。証券会社出身の私には、株式公開以外は専門外なのです。株式公開コンサルタント会社として成功した先輩から「証券会社を出ると株式公開では食べていけない。経営コンサルタントとしての説得力が勝負だ」と伺いました。そのとき私は「独立は無理だ」と率直に思ったことを覚えています。
 とは言うものの私は「株式公開は日本の産業振興のために存在する」と信じていました。「ファイブアイズ」と命名したのも、もちろん中心はIPOですが、それ以外にIncubation(育成)、 Investment(投資)など他のIを意識していたからです。
 何年か日本新事業支援機関協議会(JANBO:http://www.janbo.gr.jp/)で開催されるインキュベーション・マネージャー(IM)養成研修で「株式公開」いう限られた分野とはいえ講師を務めさせて頂いたのも、コンセプト自体に違和感が乏しかったからでしょう。振り返ってみるとこの考え方に問題があったのです。
 近年の株式公開制度の改革に、私は「やむを得ない」と感じる一方でかなり批判的でもあります。一番の理由は、日本の技術ベンチャーの成長の芽を摘むことです。今の監査体制や公開審査では、SONYもHondaも存在し得なかったでしょう。金融庁が言うように制度自体は悪くないのかもしれません。
 でも現場の皮膚感覚では、創造性を要求されるスタートアップベンチャーには、株式公開はお勧めし難く感じます。BIの観点から見れば、株式公開制度を活用する時代は終わったのかもしれません。(あるいは始まってすらいなかったのかもしれません。)
 欧米先進諸国でIPOは、元来BIとそれほど密接なものではないという識者もいます。みなさまに情報を頂きたい部分でもあります。日本でもSONYやHondaは、資本市場が育成した会社ではありません。IPOがBIとストレートに絡むのは、ネットベンチャー周辺に限られるのでしょうか?「何でもIPOの土俵に上げては、育つものも育たずIPOが機能不全に陥る」という意見も聞きます。BI案件の大半はIPOに向かない案件・段階であり、そこにソリューション(解決策)を持てばこそIPOも健全に進められる、私もそう思うようになりました。
 株式公開は厳冬の時代を迎え、株式公開コンサルタント会社に案件はありません。一方でビジネス・インキュベーションは、日本でも確立期に入る感触があり、民間で箱モノを持たない会社でも、大都市圏でビジネスとして成立する可能性がありそうです。株式公開にも「プロ向け市場」など未知なる領域が残ってはいるものの、新興市場の観点で捉えれば日本は世界の先進国です。一方でビジネス・インキュベーションの分野は、まだまだ官中心、先進国とも言い難く、「タイムマシン経営」の余地があるかもしれません。かつての先輩の言葉通り、新しいビジネスを軌道に乗せるには、私たちにも経営コンサルタントとしての説得力が求められるのでしょう。ここをクリアして初めて、株式公開業務での強みが活きる気がするのです。

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百字の喝(2)

 般若の智慧と便法と、諸法で諸人に力添え、清浄世界に引き入れる。
(次の4句 「図説『理趣経』入門」大栗道榮著より)

 「般若の智慧」は教え、「便法と諸法」は方法論です。方法論の無い教えは社会から遊離し、方法論だけでは道に迷います。
 欲望には食欲・睡眠欲・性欲・財欲・名誉欲などがあります。食欲・睡眠欲は生命維持の、性欲は種族維持の機能です。この3つが幸せの必要条件です。財欲・名誉欲は人間特有ですが、自分や社会が進化する原動力となります。幸せの上に充実が得られます。人生は欲望を満たすプロセスです。欲望
が全てではありませんが、欲望なくして幸福はなく、否定しても否定し尽くす事ができません。
 この句は金剛欲明妃の境地を示すと言われます。小欲を大欲に変換し、欲望が清浄世界への導きなるというのです。大欲と小欲の違いはいろいろ説明されます。私なりにはこんな説話を考えてみました。
 
 今は不景気、私のところも株式公開より資金調達の相談が多いくらいです。A社長は従業員をリストラし、望みを私のコンサルティングにかけます。B社長は従業員には手を付けず、自分の給与の一部を資金繰りに当てながら、ここ1年を凌ぐ相談に来られます。交換条件も成功報酬、お金が動かない時期だけに、本来はお会いするだけ時間の無駄でしょう。A社長には永年家族ぐるみで交際する大富豪がいるのですが、「この人と商売をする発想はなかった」とのこと、自分の人脈は温存し、他人の褌で会社の危機を乗り切ろうと人の良い当社に目を付けたのです。B社長はA社長より大欲に近付いてはいます。資金調達に成功するのはどちらか、いろいろな見方があり難しいところです。
 こんなときにC社長が登場します。「沼田さん、今、日本のベンチャー企業はお金に苦しんでいます。お金が無いので志も消えてしまいそうです。私の会社も同じです。お金の専門家として、日本中のベンチャー企業全部を救ってみませんか?」
 私は少し驚きます。「きっと一千億円は必要ですよ。そんなお金どこから集めるんですか?」、C社長は「そんな金額で助かりますか?私もお手伝いしますから、是非その1千億円プロジェクトをスタートさせましょう。当面沼田さんが動くコストはお支払いたしますので、すぐ見積もって下さい。」
 C社長は、皆がお金を必要とする時期、自分だけ抜け駆けしても勝ち目は乏しく、また勝てても状況は好転しないと考えているようです。C社の経営資源では、投資家に魅力あるストーリーが作れなくても、何社かで経営資源を持ち寄れば、世の中を変えるビジネスができるかもしれない、と言うのです。「クライアントが資金調達を求めても、ほとんど打つ手は無いのではありませんか?」
 「志はよく分かりましたが、具体的なアクションプランに落とさないと、人は動きません。半年はかかると思いますが・・・」、するとC社長、「経営は常に準備不足です。お金で動く人間はお金で、地位で動く人間は地位で、異性で動く人間は異性で、宗教で動く人間は宗教で、とにかく動かし始めないと間に合いません。」
「私は規制業種である証券業界の近くで仕事をする身です。適切な開示ができない中で行動を起こす事は命取りです・・・」と言いかけ、どうも私は小欲に過ぎず、これでは諸人に力添えはできないことに気付いたのです。

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百字の喝(1)

 菩薩はすぐれた智慧をもち、死ぬまで生命のある限り、常に諸人の利のために、尽くしてしかも自らは、涅槃に往くことを望まない
(最初の4句 「図説『理趣経』入門」大栗道榮著より)

 日本は統合の国、実用化する民。
日本は世界中の良い物を柔軟に受け入れ、実用的に「いいところ取り」をします。先日「ミシュランガイド東京」が発売されましたが、東京はまさしく美食の都、世界に類のない多様性と高い水準が明らかになりました。庶民の暮らしの中でも、和洋中そして多国籍料理に日々舌鼓を打ちます。食以外でも多くの分野で、日本は真似からスタートし、取り入れ噛み砕き、それを実用的にまとめあげ高めてきました。
 もう一つの事例が宗教です。手前味噌ではありますが日本の密教は、世界の宗教の「いいところ取り」をやりました。加持・祈祷という最終兵器を保有しながらも、教えは柔軟で哲学的な完成度が高く、多様性とそれなりの水準を実現しています。葬儀は仏教、初詣は神社、結婚式は教会と見事に棲み
分ける日本人の宗教観は、密教に源があるのかもしれません。
 密教は経営者に面白いツールでもあります。教条的な面が乏しく個性を徹底して尊重する一方で、天下国家を語り社会性が豊かです。現実に埋没せず、かといって遊離することもなく、見事な距離感を保ちます。まさしく経営そのものでは無いでしょうか?個性が行過ぎ「教祖」が生まれたり、形式主義が蔓延し宗教としての生命力が失われたり、さまざまな問題は出るのもご愛嬌かもしれません。

 理趣教は密教の最重要経典です。理趣とは「真理の味わい」という意味です。真言密教の僧侶は朝晩このお経を唱えます。禅宗では加持・祈祷に用いると聞きます。いずれにせよご利益の大きいお経なのです。
 百字の喝はこの理趣経の一部で、全体を要約した部分ともいわれます。時間が無い時はここだけ読まれる事もあります。百字の喝を3回読めば、理趣教全体を読んだのと同じ利益があるという説もあります。今回は仏様にお許しをいただき、この百字の喝をご紹介してみたいと考えます。
 冒頭の訳文は最初の4句(漢字で20字)百字の喝の結論部分に当たります。私はこの句を「経営者は命の続く限り、国家・大衆の利益となる事業を営みなさい」と読んでいます。「密教の菩薩(金剛薩た)は経営者そのもの」というのが私の密教観です。そうなると経営者個人の利益は少し後に考えよと読めます。大乗仏教の中心思想を表現する箇所ですが、経営者に置き換えて考えると、さらなる味わいが生まれます。
 この句は密教の主役・金剛薩たの決意を示すとされます。金剛薩たは密教行者の象徴でもあり、経営者に近い存在と感じます。百字の喝には金剛薩たを中心に五秘密尊の教えが説かれます。他の四菩薩は欲・触・愛・慢の名を持つ女尊で、金剛薩たになまめかしく寄り添います。人間の欲望を象徴して
いるようでもあります。肉体を持つ限り人間は、欲望から離れては生きられないのかもしれません。
 「金剛薩たは経営者」のイメージが少し湧いたでしょうか?欲望をも悟りにつながる壮大な物語がここからスタートするのです。

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人間の器は大きくなるか!(下)

 「年賀状1,000枚」ほど明確ではありませんが、サラリーマン主体の第二段階と、経営者主体の第三段階とでは、目標設定力にも差がでます。目標設定力とは自分との約束を守る技術です。WEBで見つけた2つの事例をご紹介しながら、第二段階から第三段階へ移行する方法を考えてみます。

 ベンチャーキャピタリストからはよく「3年後の会社を数字で語れない経営者は失格」と聞きますが、残念ながら私はこのレベルには達していません。ただ年間目標、月間目標、週間目標などはマンダラ手帳(http://www.myhou.co.jp/)を1年間活用し、少し慣れてきました。マンダラ手帳は自分のスケジュールを優先する技術を活用し、副作用を抑えながら夢を現実化する手帳です。周囲に流されない自分を貫き、自己活性化を図る目的もあります。来年使われてみては如何でしょうか?
 また「ISK実践課題5項目」(http://www.isk.ne.jp/greeting/index.html)は、目標設定力の観点から見事です。1.早起きする、2.大きな声・笑顔、3.TO DO LISTを毎日書く、4.報告・確認・再確認、5.3S(整理・整頓・清掃)を毎日実践する、すべては自分との約束からスタートしています。この5項目は「3%の勝ち組経営者になるための習慣」とあり、私も反省されられますが、確かにこの通りです。

 第二段階は経営者以前の段階ともいえますが、私も含め中途半端な経営者はいずれ会社を危うくします。ここを徹底すれば、標準までは立ち直ります。人は貧しい時にはよい仕事ができても、お金と共に自分との約束を守れなくなるものです。経営危機は初心にかえる契機になります。

 第三段階は経営者の段階ですが、経営者は個人として差別化されているだけでは失格で、他人からの共感が必要です。さらに自分の差別化を進めると、世間の反発を買い現世利益からかえって遠ざかる段階ともいえます。ここで経営者は、最低一回は地獄の苦しみを味わいます。
 人間の琴線に触れる共通項を学ぶのがこの段階です。具体的な手法としては宗教(人生哲学)、ゴルフ、女性遊びなどが考えられます。前の段階では現実逃避にしかならない遊びが、この段階では経営力向上の肥しになります。実際どれも、経営者は熱心ですよね。
 理趣経というお経は、「性の快楽も悟りの境地」と説きます。理趣経の世界はこの第三段階からですので、宗教書でもこんな表現が出て来るのです。頭で考えると訳が分からなくなりますが、実体験で読み解けば人間の真理を言い当てていることが分かります。
 宗教は信仰部分を除くと、その時代が求める共有感覚に近いものが残ります。差別化が行き過ぎて叩かれるより、宗教的発想で共有感覚をくすぐる方が、経営手法として有効性が高まる段階があるのです。そこに至ると経営者は、ほぼ例外なく宗教好きになります。

 マンダラ手帳もISK実践課題5項目も、宗教に造詣の深い方が作られているようです。宗教の初期段階は、第二段階のトレーニング(掃除・挨拶・食事作法・僧侶間の上下関係など)で形成され、次に第三段階(坐禅、教義の解説、読経、真言など)に移行します。一般信者には第三段階のトレーニングを薄めてご紹介するのですが、宗教の本質は第二段階が土台になっているのです。
 宗教は人間の器を大きくする技術の一つです。そしてある部分においては、ビジネスの成功法則とも完全に合致しているのです。

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人間の器は大きくなるか!(中)

 人間の器を私は5段階に分類します。まずその結論だけ申し上げます。
 第一段階は自分も大きな人間になりたいとの志を立てる段階(志学・而立)第二段階は専門分野を極め人脈を形成し、自らを差別化し軸を完成する段階(不惑)、第三段階は相手と共感が形成され他人が動く段階(知命)、第四段階は社会にムーブメントを巻き起こし、抵抗がなくなる段階(耳順)、第五段階は宇宙の真理と一体化した段階(従心)です。
 世にいう成功哲学は5段階のどこかで効果を発揮します。逆に申し上げれば、効果が乏しい段階、現世利益の観点からは逆効果になる段階もあります。これが「壁」です。「成功の秘訣を掴んだ」と思っても、手法を継続するだけでは結果は継続しないのです。

 「年賀状が1,000枚以上書ければ独立可能」が私の持論です。これは第二段階をクリアするメルクマールです。経営者の多くは楽々クリアしています。ところがご年配の優秀なサラリーマンでも「数百枚台の前半」という人が思いのほか多いのです。
 うちの社員に聞いてみると・・・アントレプレナー養成の総本山を自負しながらも・・・結果は悲惨なものでした。
 
 年賀状を増やすには営業が最適です。現実に営業マンは第二段階を最短で突破します。起業に一番近いスキルといえるでしょう。
 職場環境に恵まれなければ、業務外で人脈形成にチャレンジする手があります。
 魅力的な異業種交流会に参加し幹部を狙うのです。一参加者でも名刺交換は可能ですが、人脈にまで育ちません。少し忙しくなっても、名刺交換をお願いされ相談を受けるポジションが有効なのです。自分が主催できればなお効果的です。
 人脈の維持には膨大なコストがかかります。魅力的な異業種交流会を開催すれば、会いたい人が会費を払って集まります。これは種ですから、花が咲き実を結ぶまで、間違っても目先の営業で「換金」しては勿体無いです。
 VIPクラスは講師としてお招きします。人脈交流会の志、参加メンバーの質・量がしっかりしていれば、かなりの確率で受けていただけます。この3点を真剣に高めることで、あなた自身の影響力をも高められるのです。
 この方法を活用すれば、20歳台で1,000枚の年賀状も夢ではありません。そのときには、日本で会えない人はいない感覚になります。実は私もそうした時期がありました。でもこれには若干錯覚が含まれます。

 20歳台のうちは、ポテンシャル(将来への可能性)で有力者にお会いでき、可愛がっていただけます。ところが40歳台を過ぎると実績が評価基準になります。多くの利害関係も出てきます。年齢に応じた成長がないと人脈は急激に減少していくのです。

 「この人はどれだけの人に影響を与えるのか?」
 
 有力者はそうした計算を無意識に働かせます。ですから40歳台以降の人脈に意外性は乏しくなります。人脈の絞り込み期とすら言えるかもしれません。20歳台で積極的に人脈を拡大し、あなた自身も成長を持続すれば、いずれ次々に花が咲きます。だからご年配の方は若く優秀な人間を応援したがるのです。

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人間の器は大きくなるか!(上)

 人間の器を大きくする、最近これが私のライフワークになりつつあります。
 ある方の勧めで私は、エリエス・ブック・コンサルティン(http://eliesbook.co.jp/)のベストセラー作家養成コース(第二期)に参加しています。ここで出版企画書を提出したところ、目次の90%は削除され「残り10%に絞れ」とアドバイスを頂きました。
 この10%を膨らませて「起業家のためのカリスマ・コミュニケーション」と題し再提出したところ、さらに40%が削除され「テーマは明らかに人間の器で、起業とは関係無い」との指摘を頂きました。
 抽象的に捉えられがちな人間の器を段階分けし具体的なのが面白い!確か
そのようなコメントでした。

 人間のウツワ?んん!
 宗教好き、占い好きとはいえ私に人間の器はないだろう、これでも株式公開の世界では専門家の端くれだし・・・そんな気持ちで2~3日過ごしたのですが、改めて提出した目次を眺めると、確かにテーマは「人間の器」かもしれません。
 その日から人間の器を中心に私の思考が回り始め、ビジネスと人間の器の関係が、だんだん解きほぐされてきました。ついには自分のライフワークのような気がしてきました。
 「表紙だけで事業計画が読める」「お酒をご一緒すれば資金調達の確率が分かる」と嘯いてきた私の経験則は、人間の器を軸に言語化できるかもしれないのです。他人の指導を受ける面白さはこういう瞬間にあるのでしょう。
 
 人間の器が大きければ、従業員、取引先、支援者の多くをビジネスに取り込めます。エンジンが大きい自動車のようなものです。すぐに利益につながるとは限りませんが、器が大きい経営者は、やり方を正すと結果につながりやすいと言えます。
 人間の器が小さければ、従業員、取引先、支援者が取り込めません。ただその分時流には乗り易く、急成長を見せるケースがあります。軽い帆船のようなもので、風向きが変わると落ち込みも激しくなります。馬力が不足気味ですので、取引先との関係強化に邁進すると、たとえば従業員が離反します。場合によっては家庭が崩壊します。新たな荷物を背負うには、積んでいた荷物を捨てなければなりません。
 40歳を越えた社長はこの原理に薄々気付いているはずです。「自分の器がもう少し大きければ・・・」私も含め経営者は、これまで何度もそう思った事でしょう。
 少なくとも自分の器を客観的に判断できれば、無理な勝負は回避できるでしょうし、逆にチャンスを見送る失敗も少なくなるでしょう。
 多くの若い社長は「今は器を磨く時期」です。とはいえこれを論理的に説明しないと、社長に成るエネルギーを持つような人は納得できませんよね。

 私の経験則によれば、一つの方法論ではエンジン馬力を上げ続けられません。成功哲学への不満はここにあります。私はこれを5つの段階に分類しています。前の段階で効果的な手法が、次の段階では器を毀損します。最高段階に適したトレーニングは、全ての人に効果的とは限らないのです。
 またこの5段階は、世間での成功度合いともある程度関連します。経営者で見ると、たとえば独立・起業は第二段階を終了していないと成功し難いですし、株式公開は第三段階クリアが成功の条件です。(新興市場では第三段階途上で株式公開を実現する会社が多いようです。)第四段階に入ると公開会社でもかなり目立つ存在です。個別の案件に対しても結構説明力があります。
 さまざまな場所でお話をしているのですが、次回以降で整理をして詳細をご披露したいと思います。経営とは関係のない部分に着目した考え方ですが、案外経営の本質を言い当てている気がしてきています。

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京都花街の経営学

 京都はベンチャー企業が輩出する地。
 数年前に京都のベンチャー事情を見る機会があり、「花街のコミュニケー
ションにベンチャー輩出のヒントがある」とのインスピレーションを受けま
した。
 成長ベンチャーが輩出する基盤として、地域のコミュニケーションは重要
です。ベンチャーの聖地・著名なシリコンバレー躍進の秘密も、コミュニケ
ーションにあったといいます。
 
 それ以来私は、銀座や六本木にお誘いいただくたびに「君達がベンチャー
育成の鍵」とホステスさんを相手に暴論を吐きました。コミュニケーション
・スキルは夜、女性を相手に磨かれます。(あくまでも男性経営者の場合で
すが。)花街は経営者研修センターでもあるのです。
 暴論も3年、耳学問も格好が付き始めた頃、C社長のお誘いでついに祇園
を体験しました。「銀座のドン」C社長は、祇園に宿坊を持つ粋な遊び人で
もあったのです!
 最高峰のお茶屋と一流の芸舞妓さん、そして「京都花街の経営学(西尾久
美子著・東洋経済新報社)」のご本まで頂きました。暴論も吐いてみるもの
です。有難うございました。

 私のコミュニケーション論がこの夜、格段の進化を遂げたのは言うまでも
ありません。その成果はいずれご披露させていただくとして、もう一つ私は
思いを新たにしました。

 それは人材教育です。

 私は高野山真言宗のお寺に通っています。そこでは「仏教は生活全体」と
教えます。真言宗は阿字観や読経、印や真言ではないのだそうです。礼儀作
法、着付け、食事作法、掃除を繰り返し教え込まれます。共同生活をする訳
ではありませんが、お師僧や先輩・後輩の関係も昔のお寺に近いシステムを
可能な範囲で踏襲します。
 こうした日常に仏は宿るのだそうです。日常の中に行の花が咲くのです。
ポイント重視でインスタントに養成すると仏に仕える僧も不良品が多くなる
とか・・・
 これはどの分野にも共通する話でしょう。
国連職員を務めた知人は「日本人は35歳で朽ち果てると海外で言われてい
る」と教えてくれました。原因は創造性教育の欠如ではありません。35歳
はどの業界でも日常にルーズな人が第一線から脱落する年齢なのです。
 業界人脈や知識では辿り着けないラインがあります。そこからは人間の信
用が器を形成し業績を作ります。外から見えない部分での努力、過去からの
蓄積の差が、人間の信用の基本を形成するのです。
 
 「祇園の人間国宝」と呼ばれる90歳を越えた芸妓さんの三味線でゲーム
に興じながら、ふと芸舞妓さんらを見ると、彼女らはまさしく僧でした。一
流は厳しい日常に支えられているのでしょう。
 十代の女性さえも美しかった!果たして来世紀、ここで遊べる財界人は日
本に何人残るのでしょうか?

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事業計画を拝見して

 「沼田先生、大手VCが出資を決めた同業者は、半年も経たずして経営不振、当社が買収を検討している所です。」
 B社長は得意気です。「VCって見る目が無いですね。」

 B社長はある経営者からのご紹介、資金調達のニーズがあるとの事でした。事前に事業計画を拝見して「可能性はゼロ」と私は返事をしました。B社長もご紹介者も「事業計画を見るだけで分かるんですか?」と不満気でした。お会いする前のやり取りが、B社長の言葉に現れているのでしょう。

 B社長は結局、投資を受けられませんでした。独創性のあるプランでしたので、きっと悔しい気持ちで一杯だったのでしょう。私は若いB社長のために2時間食事をしながら、問題点をズバリ指摘しました。これは努力してもお金の集まらない多くの会社に共通する問題点でもあります。
 
 「あなたの事業計画には商品・サービスの独創性の説明しかありません。ここを訴えたい気持ちは痛いほど分かるけど、これを30%以下に抑えないとダメです。自分のやりたい事ばかりを主張しても、世間で友達はできないでしょ?」
 「投資家は商品・サービスに関して素人です。社長のやりたい事を説明しても、無意識に批判的な思考回路から働くのです。」
 「投資家から共感を得やすい部分の説明からスタートすべきです。例えば販売戦略は、どのビジネスにも共通ですし、社会との接点になる部分です。知的で最後はこちらが頭を下げる話ですので、最初から共感も得やすいのです。」
 「緻密な販売戦略から商品・サービスの特性が垣間見える事業計画が最高なんです。実績が無い会社の場合、本当に売上が上がるか、投資家の最大の心配はそこですから・・」
 「3分で資金調達の失敗を判断したのはこの目次です。目次には販売戦略の項目が一つもありません。」
 
 間違っているのは投資家だ、投資家はもっと事業を見る目を養うべきだ、というB社長の心の声、でも日本の大半の投資家は事業のプロではありません。事業家としてB社長が正しいか間違っているか、私には分かりません。私の専門分野は、投資家に理解され、資金調達に成功する方法論です。少し踏み込むなら、経営者としての最適なコミュニケーションのあり方とも言えるかもしれません。
 事業の素人である投資家の心理は、実は人間心理でもあります。一方で事業計画は、たとえ外注しても、見事なほど社長の心理状態を表します。ですから事業計画の修正を通じて、社長の心理状態を修正する事も可能です。少し見方を変えれば、事業が分からなくても、会社の売上や成長性を見極める事もある程度はできるのです。 

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ベンチャー流の景気判断

 ある監査法人の代表社員から面白い話を伺いました。
 「株式公開社数は本年150社、来年100社、その後は50社前後で長期安定すると監査法人界隈では言われますが、証券業界ではいずれ170社前後まで回復するという見方が強いんです。」
 監査法人の消極姿勢、証券会社の積極姿勢の対比が面白い話ですが、背景には日本の景気状況があるように思います。
 証券会社の公開引受部門は「小さい案件は順番待ちを強いられる」などと言われますが、最近の証券会社は順番待ちを強いるほど案件を持っていないと私は推測しております。それが最近の証券会社の積極姿勢を生む背景です。
 日本経済全体は悪くはないかもしれませんが、ベンチャー企業は結構深刻です。ここにも格差問題が存在するのです。最近は上場予定企業も業績面で失速するケースが多く見られます。監査法人は大企業からも収益が取れますので、今の時期に新規公開に積極的になる理由がありません。従来型の案件が業績面から脱落し、新しいタイプの案件は監査法人を突破できず、その結果証券会社に案件が無いようなのです。

 ベンチャー企業は内需と関連が強く景気に敏感です。景気の良い時期は勝つ確率も高いのですが、景気が悪いと何をしても裏目に出て、挑戦した会社が深く傷付きます。昨年あたりから私は、「とにかくゆっくり」「公開時期は延ばせ」とアドバイスをしてきました。私は占いで知られていますので、運勢を指摘されたと捉えたクライアントも多かったようですが、実は景気を心配していたのです。
 今のような時期は、積極果敢なベンチャー企業は目も当てられない結果となりますので、選別を強める証券会社、監査法人には拾う案件が乏しくなります。それでも歴史は繰り返し、景気が戻るとこうした企業の一部は元来の積極性が活きて短期間で優良企業に一変します。
 ベンチャー企業は先が読めません。債務超過の会社も一回の提携・投資で立ち直り、弱体な管理部門が一人の人員で生まれ変わります。社長の意識に問題があっても翌日考えを変えるかもしれません。思いのほか変化率は大きいのです。特に外部環境が変化した際の変化率には驚くべきものがあります。しかもベンチャー経営者は失敗から学びます。不景気の時期は失敗の宝庫ですから、ベンチャー経営者にとっては研修期間ともいえます。研修を終え一段とたくましくなったベンチャー企業が、いずれ市場を席巻することでしょう。

 このような時期に選別を強める証券会社は、次世代の負け組に転落します。それが分かるので証券会社はこの時期に積極的なのです。株式公開関連の業務は、景気の良い時は案件を選別し、景気の悪い時は案件を拡大するのが鉄則です。ベンチャー企業の景気は、大企業と比較して悪い時期が長いので、概ね案件拡大を心掛けた証券会社が、苦労はしながらも勝利をモノにしやすいのです。
 逆にベンチャー経営者は、勝負のタイミングを絞り、景気が悪い今は、体制整備・勢力温存の時期です。例えば新たな業務提携は不景気な時期に決まりやすいと言われます。体制固めのチャンスです。逆に安直な拡大路線は慎むべきでしょう。研修疲れで余力を失ってしまっては、研修の意味がありませんので・・・

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