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ポストIPO時代のビジネス・インキュベーション

 少し前の話、英エコノミスト誌編集長のビル・エモット氏来日の際に、数分間名刺交換の機会を頂きました。その折に職業を質問され「IPOコンサルタント」と答えたところ、「ビジネス・インキュベーション?エクセレント!」と返されました。
 欧米では「ビジネス・インキュベーション(BI)」が一般的のようですが、私は若干違和感を覚えました。証券会社出身の私には、株式公開以外は専門外なのです。株式公開コンサルタント会社として成功した先輩から「証券会社を出ると株式公開では食べていけない。経営コンサルタントとしての説得力が勝負だ」と伺いました。そのとき私は「独立は無理だ」と率直に思ったことを覚えています。
 とは言うものの私は「株式公開は日本の産業振興のために存在する」と信じていました。「ファイブアイズ」と命名したのも、もちろん中心はIPOですが、それ以外にIncubation(育成)、 Investment(投資)など他のIを意識していたからです。
 何年か日本新事業支援機関協議会(JANBO:http://www.janbo.gr.jp/)で開催されるインキュベーション・マネージャー(IM)養成研修で「株式公開」いう限られた分野とはいえ講師を務めさせて頂いたのも、コンセプト自体に違和感が乏しかったからでしょう。振り返ってみるとこの考え方に問題があったのです。
 近年の株式公開制度の改革に、私は「やむを得ない」と感じる一方でかなり批判的でもあります。一番の理由は、日本の技術ベンチャーの成長の芽を摘むことです。今の監査体制や公開審査では、SONYもHondaも存在し得なかったでしょう。金融庁が言うように制度自体は悪くないのかもしれません。
 でも現場の皮膚感覚では、創造性を要求されるスタートアップベンチャーには、株式公開はお勧めし難く感じます。BIの観点から見れば、株式公開制度を活用する時代は終わったのかもしれません。(あるいは始まってすらいなかったのかもしれません。)
 欧米先進諸国でIPOは、元来BIとそれほど密接なものではないという識者もいます。みなさまに情報を頂きたい部分でもあります。日本でもSONYやHondaは、資本市場が育成した会社ではありません。IPOがBIとストレートに絡むのは、ネットベンチャー周辺に限られるのでしょうか?「何でもIPOの土俵に上げては、育つものも育たずIPOが機能不全に陥る」という意見も聞きます。BI案件の大半はIPOに向かない案件・段階であり、そこにソリューション(解決策)を持てばこそIPOも健全に進められる、私もそう思うようになりました。
 株式公開は厳冬の時代を迎え、株式公開コンサルタント会社に案件はありません。一方でビジネス・インキュベーションは、日本でも確立期に入る感触があり、民間で箱モノを持たない会社でも、大都市圏でビジネスとして成立する可能性がありそうです。株式公開にも「プロ向け市場」など未知なる領域が残ってはいるものの、新興市場の観点で捉えれば日本は世界の先進国です。一方でビジネス・インキュベーションの分野は、まだまだ官中心、先進国とも言い難く、「タイムマシン経営」の余地があるかもしれません。かつての先輩の言葉通り、新しいビジネスを軌道に乗せるには、私たちにも経営コンサルタントとしての説得力が求められるのでしょう。ここをクリアして初めて、株式公開業務での強みが活きる気がするのです。

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