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百字の喝(1)

 菩薩はすぐれた智慧をもち、死ぬまで生命のある限り、常に諸人の利のために、尽くしてしかも自らは、涅槃に往くことを望まない
(最初の4句 「図説『理趣経』入門」大栗道榮著より)

 日本は統合の国、実用化する民。
日本は世界中の良い物を柔軟に受け入れ、実用的に「いいところ取り」をします。先日「ミシュランガイド東京」が発売されましたが、東京はまさしく美食の都、世界に類のない多様性と高い水準が明らかになりました。庶民の暮らしの中でも、和洋中そして多国籍料理に日々舌鼓を打ちます。食以外でも多くの分野で、日本は真似からスタートし、取り入れ噛み砕き、それを実用的にまとめあげ高めてきました。
 もう一つの事例が宗教です。手前味噌ではありますが日本の密教は、世界の宗教の「いいところ取り」をやりました。加持・祈祷という最終兵器を保有しながらも、教えは柔軟で哲学的な完成度が高く、多様性とそれなりの水準を実現しています。葬儀は仏教、初詣は神社、結婚式は教会と見事に棲み
分ける日本人の宗教観は、密教に源があるのかもしれません。
 密教は経営者に面白いツールでもあります。教条的な面が乏しく個性を徹底して尊重する一方で、天下国家を語り社会性が豊かです。現実に埋没せず、かといって遊離することもなく、見事な距離感を保ちます。まさしく経営そのものでは無いでしょうか?個性が行過ぎ「教祖」が生まれたり、形式主義が蔓延し宗教としての生命力が失われたり、さまざまな問題は出るのもご愛嬌かもしれません。

 理趣教は密教の最重要経典です。理趣とは「真理の味わい」という意味です。真言密教の僧侶は朝晩このお経を唱えます。禅宗では加持・祈祷に用いると聞きます。いずれにせよご利益の大きいお経なのです。
 百字の喝はこの理趣経の一部で、全体を要約した部分ともいわれます。時間が無い時はここだけ読まれる事もあります。百字の喝を3回読めば、理趣教全体を読んだのと同じ利益があるという説もあります。今回は仏様にお許しをいただき、この百字の喝をご紹介してみたいと考えます。
 冒頭の訳文は最初の4句(漢字で20字)百字の喝の結論部分に当たります。私はこの句を「経営者は命の続く限り、国家・大衆の利益となる事業を営みなさい」と読んでいます。「密教の菩薩(金剛薩た)は経営者そのもの」というのが私の密教観です。そうなると経営者個人の利益は少し後に考えよと読めます。大乗仏教の中心思想を表現する箇所ですが、経営者に置き換えて考えると、さらなる味わいが生まれます。
 この句は密教の主役・金剛薩たの決意を示すとされます。金剛薩たは密教行者の象徴でもあり、経営者に近い存在と感じます。百字の喝には金剛薩たを中心に五秘密尊の教えが説かれます。他の四菩薩は欲・触・愛・慢の名を持つ女尊で、金剛薩たになまめかしく寄り添います。人間の欲望を象徴して
いるようでもあります。肉体を持つ限り人間は、欲望から離れては生きられないのかもしれません。
 「金剛薩たは経営者」のイメージが少し湧いたでしょうか?欲望をも悟りにつながる壮大な物語がここからスタートするのです。

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