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やっと改正労働基準法に関する通達が発出

平成22年4月1日から施行される改正労働基準法について、厚生労働省は労働基準局長名で「労働基準法の一部を改正する法律の施行について」(基発第0 5 2 9 0 0 1 号)と題する通達を都道府県労働局長宛に5月29日付で発出していたようですが、やっと本日(6月5日)ホームページで公開したところです。
「労働基準法の一部を改正する法律の施行について」(基発第0 5 2 9 0 0 1 号)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成20年法律第89号。)改正後の労働基準法、労働基準法施行規則等の一部を改正する省令(平成21年厚生労働省令第113号。)、及び労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準の一部を改正する告示(平成21年厚生労働省告示第316号。)の内容等を明らかにしたものです。

通達の主な内容は以下の通りです。
時間外労働について
1.特別条項付き時間外労働協定で定める事項
 限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めなければならない。
労使当事者は時間外労働協定において、
(1)一日を超え三箇月以内の期間及び(2)一年間について延長時間を定めなければならない。
(1)及び(2)の期間の双方について特別条項付き協定を締結する場合には、それぞれについて限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めなければならない。

 限度時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めなければならない

 特別条項付き協定において限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めるに当たっては、時間外労働について2割5分を超える率とするように努めなければならない

 1年単位の変形労働時間制により労働する労働者についても、労使の努力によって限度時間を超える時間外労働を抑制すること

2.限度基準の遵守、助言及び指導
特別条項付き協定において限度時間を超える時間外労働に係る割増賃
金率が定められていないなど特別条項付き協定が限度基準に適合していない場合には、労働基準監督署長による助言及び指導の対象となる。

3.適用期日
改正告示の適用日である平成22年4月1日以後に特別条項付き協定を締結する場合及び同日前に締結された特別条項付き協定を同日以後に更新する場合に適用される。

法定割増賃金率について
1.法定割増賃金率の引上げ
 趣旨
割増賃金による使用者の経済的負担を加重することによって特に長い時間外労働を強力に抑制することを目的として、1箇月について60時間を超えて時間外労働をさせた場合には、その超えた時間の労働について、法定割増賃金率を現行の2割5分分以上の率から5割以上の率に引き上げることとした。

 対象となる時間外労働
使用者が1箇月について60時間を超えて時間外労働をさせた場合には、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないこととした。

「1箇月」とは、暦による1箇月をいうものであり、その起算日を法第89条第2号の「賃金の決定、計算及び支払の方法」として就業規則に記載する必要があること。

1箇月の起算日については、毎月1日、賃金計算期間の初日、時間外労働協定における一定期間の起算日等とすることが考えられるが、就業規則等において起算日の定めがない場合には、労使慣行等から別意に解されない限り、賃金計算期間の初日を起算日とするものとして取り扱うこと。

「その超えた時間の労働」として5割以上の率で計算した割増賃金の支払が義務付けられるのは、一箇月の起算日から時間外労働時間を累計して60時間に達した時点より後に行われた時間外労働であること。

なお、法の施行日である平成22年4月1日を含む1箇月については、施行日から時間外労働時間を累計して60時間に達した時点より後に行われた時間外労働について、5割以上の率で計算した割増賃金の支払が必要となること。

 休日労働との関係
法定休日以外の所定休日における労働は、それが労基法第32条から第32条の5まで又は第40条の労働時間を超えるものである場合には、時間外労働に該当するため、労基法第37条第1項ただし書の「1箇月について60時間」の算定の対象に含めなければならないものであること。

なお、労働条件を明示する観点及び割増賃金の計算を簡便にする観点から、就業規則その他これに準ずるものにより、事業場の休日について法定休日と所定休日の別を明確にしておくことが望ましいものであること。

 深夜労働との関係
深夜労働のうち、1箇月について60時間に達した時点より後に行われた時間外労働であるものについては、深夜労働の法定割増賃金率と1箇月について60時間を超える時間外労働の法定割増賃金率とが合算され、7割5分以上の率で計算した割増賃金の支払が必要となる。

2.中小事業主に対する猶予措置
経営体力が必ずしも強くない中小企業においては、時間外労働抑制のための業務処理体制の見直し、新規雇入れ、省力化投資等の速やかな対応が困難であり、やむを得ず時間外労働を行わせた場合の経済的負担も大きい。

このため、中小事業主の事業については、当分の間、法定割増賃金率の引上げの適用を猶予することとし、代替休暇も適用されないこととなること。

なお、改正法の施行後三年を経過した場合において、中小事業主に対する猶予措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされていること。

代替休暇について
1.趣旨
労働者の健康を確保する観点から、特に長い時間外労働をさせた労働者に休息の機会を与えることを目的として、1箇月について60時間を超えて時間外労働を行わせた労働者について、労使協定により、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払に代えて、有給の休暇を与えることができることとした。

2.代替休暇に係る労使協定の締結
代替休暇を実施する場合には、事業場において労使協定を締結する必要があること。

個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務付けるものではないこと。

労使協定が締結されている事業場において、個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の意思によるものであること。

労使協定の締結によって代替休暇を実施する場合には、代替休暇に関する事項を労基法第89条第1号の「休暇」として就業規則に記載する必要があること。

3.代替休暇に係る労使協定で定める事項
 代替休暇として与えることができる時間の時間数の算定方法

労働者が代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率と、労働者が代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率との差に相当する率(以下「換算率」という。)を乗じるものとされており、労使協定では、この算定方法にしたがって具体的に定める必要があること。

労働者が代替休暇を取得しなかった場合に支払う割増賃金率は、労基法第37条第1項ただし書の規定により5割以上の率とする必要があり、労働者が代替休暇を取得した場合に支払う割増賃金率は、同項本文の規定により2割5分以上の率とする必要があり、いずれも労基法第89条第2号の「賃金の決定、計算及び支払の方法」として就業規則に記載する必要があること。

 代替休暇の単位
1日又は半日とされており、労使協定では、その一方又は両方を代替休暇の単位として定める必要があること。

「1日」とは労働者の1日の所定労働時間をいい、「半日」とはその2分の1をいうものであること。「半日」については、必ずしも厳密に1日の所定労働時間の2分の1とする必要はないが、その場合には労使協定で当該事業場における「半日」の定義を定めておくこと。

代替休暇として与えることができる時間の時間数が労使協定で定めた代替休暇の単位(1日又は半日)に達しない場合であっても、「代替休暇以外の通常の労働時間の賃金が支払われる休暇」と合わせて与えることができる旨を労使協定で定めたときは、当該休暇と代替休暇とを合わせて1日又は半日の休暇を与えることができる。時間単位年休を活用することも差し支えないこと。

割増賃金の支払に代えることができるのは、代替休暇の部分に限られるものであること。

 代替休暇を与えることができる期間
時間外労働が1箇月について60時間を超えた当該1箇月の末日の翌日から2箇月以内とされており、労使協定では、この範囲内で定める必要があること。

代替休暇を与えることができる期間として労使協定で1箇月を超える期間が定められている場合には、前々月の時間外労働に対応する代替休暇と前月の時間外労働に対応する代替休暇とを合わせて1日又は半日の代替休暇として取得することも可能であること。

 代替休暇の取得日及び割増賃金の支払日
からまでの事項以外の事項として労使協定で定められるべきものとして、次のものが考えられるものであること。

ア 労働者の意向を踏まえた代替休暇の取得日の決定方法

イ 1箇月について60時間を超える時間外労働に係る割増賃金の支払日

4.法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払が不要となる時間
法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払が不要となる時間は、1箇月について60時間を超える時間外労働のうち労働者が取得した代替休暇に対応する時間の労働とされており、具体的には、労働者が取得した代替休暇の時間数を換算率で除して得た時間数の時間とされているものであ
ること。

したがって、代替休暇取得の意向があった労働者が実際には代替休暇を取得できなかったときには、取得できなかった代替休暇に対応する時間の労働については、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払が必要となること。

5.代替休暇と年次有給休暇との関係
代替休暇は、年次有給休暇とは異なるものであること。
労働者が代替休暇を取得して終日出勤しなかった日については、正当な手続により労働者が労働義務を免除された日であることから、年次有給休暇の算定基礎となる全労働日に含まないものとして取り扱うこと。

時間単位年休について
1.趣旨
仕事と生活の調和を図る観点から、年次有給休暇を有効に活用できるようにすることを目的として、労使協定により、年次有給休暇について5日の範囲内で時間を単位として与えることができることとしたものであること。

2.時間単位年休に係る労使協定の締結
時間単位年休を実施する場合には、事業場において労使協定を締結する必要があること。

労働者が請求した時季に時間単位により年次有給休暇を与えることができることとするものであり、個々の労働者に対して時間単位による取得を義務付けるものではないこと。

労使協定が締結されている事業場において、個々の労働者が時間単位により取得するか日単位により取得するかは、労働者の意思によるものであること。

労使協定の締結によって時間単位年休を実施する場合には、労基法第89条第1号の「休暇」として時間単位年休に関する事項を就業規則に記載する必要があること。

3.時間単位年休に係る労使協定で定める事項
 時間単位年休の対象労働者の範囲
事業の正常な運営との調整を図る観点から、労使協定では、時間単位年休の対象労働者の範囲を定めることとされていること。

なお、年次有給休暇を労働者がどのように利用するかは労働者の自由であることから、利用目的によって時間単位年休の対象労働者の範囲を定めることはできないものであること。

 時間単位年休の日数
時間を単位として与えることができる年次有給休暇の日数については、5日以内とされており、労使協定では、この範囲内で定める必要があること。

当該次年度の時間単位年休の日数は、前年度からの繰越分も含めて5日の範囲内となるものであること。

 時間単位年休1日の時間数
1時間に満たない時間数については、時間単位に切り上げる必要があること。

労働者の所定労働時間数ごとにグループ化して定めること(例えば、所定労働時間6時間以下の者は6時間、同6時間超7時間以下の者は7時間、同7時間超の者は8時間等)も差し支えないこと。

 1時間以外の時間を単位とする場合の時間数
2時間や3時間といったように、1時間以外の時間を単位として時間単位年休を与えることとする場合には、労使協定で、その時間数を定める必要があること。

4.時季変更権との関係
労働者が時間単位による取得を請求した場合に日単位に変更することや、日単位による取得を請求した場合に時間単位に変更することは、時季変更に当たらず、認められないものであること。

あらかじめ労使協定において時間単位年休を取得することができない時間帯を定めておくこと、所定労働時間の中途に時間単位年休を取得することを制限すること、1日において取得することができる時間単位年休の時間数を制限すること等は認められないこと。

5.計画的付与との関係
計画的付与として時間単位年休を与えることは認められないものであること。

6.時間単位年休に対して支払われる賃金
「平均賃金」「通常の賃金」「標準報酬日額」のいずれを基準とするかについては、日単位による取得の場合と同様としなければならないこと。

7.時間単位年休に関するその他の取扱い
 1日の年次有給休暇を取得する場合の取扱い
1日の年次有給休暇を取得する場合には、原則として時間単位ではなく日
単位により取得するものであること。

 半日単位年休の取扱い
年次有給休暇の半日単位による付与については、年次有給休暇の取得促進の観点から、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱うこととしているところであるが、この取扱いに変更はないものであること。

その他
1.施行期日等
改正法及び改正省令の施行期日並びに改正告示の適用日は、平成22年4月1日であること。

2.地方公務員に係る法の適用関係
一般職に属する地方公務員に対しては適用されないものであること。

通達の全文は以下をご参照ください。
労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成21年5月29日基発第0529001号)

改正労基法に関しては以下をご参照ください。
厚生労働省:労働基準法が改正されます(平成22年4月1日施行)

限度基準に関しては以下をご参照ください。
労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準

去年出された通達は以下をご参照ください。
労働基準法の一部を改正する法律について(平成20年12月12日基発第1212001号)

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