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会社法・商業登記入門第21回「非公開会社での取締役及び監査役の任期~10年はどうか?」

こんにちは。中央区の司法書士の大越です。

このコーナーでは、平成18年5月1日に施行された会社法及びそれに関する商業登記について、平易な言葉で分かりやすく説明していきます。
毎回テーマを決め、これから起業を考えている方および現在会社を経営している方にも役立つ情報を提供していきたいと考えています。

第21回は、「非公開会社での取締役及び監査役の任期~10年はどうか?」について説明します。


1.取締役及び監査役の任期
 株式会社(以下「会社」といいます。)の場合、役員の任期は無制限ではなく、法令又は定款で定めた所定の期間を経過すると満了し、改めて選任手続を行う必要があります。
 取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までです(会社法332条1項)。
 一方、監査役の任期は、原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までです(会社法336条1項)。
 一見すると分かりにくいですが、取締役であれば、選任後2回目の事業年度末日に係る定時株主総会の終結の時までということです。

 また、取締役の任期は、定款で短縮又は伸長することができます。非公開会社であれば、最大で10年以内まで伸長することが可能です(会社法332条1項、2項)。
 他方で、監査役の任期は、監査役の業務の性質上、短縮することはできませんが、取締役と同様に非公開会社であれば、最大で10年内まで伸長することが可能です(会社法336条1項、2項)。
 
2.任期満了と再任手続
 上記の通り、会社役員には任期がありますが、通常、頻繁に役員構成を変更することはないでしょう。
 事業規模が小さい会社や同族会社の場合はもちろん、比較的規模の大きな会社でも、追加役員の選任を行うことはあっても、社長等主要な経営陣が交代することは稀なはずです。
 しかし、同じ方が役員を継続する場合でも、自動更新はされず、任期満了ごとに役員の再任手続を行い、その旨の登記申請をする必要があります。
 再任手続を怠ると、会社代表者が100万円以下の過料の制裁に処される可能性がありますので、ご注意ください(会社法976条)。

 多くの会社が2年に1回再任手続が必要になるかと思いますが、定款で任期を変更している場合又は任期満了事由に該当する例外(会社法332条4項、同法336条4項)、若しくは補欠・増員した役員がいる場合などは管理にご注意ください。
 
3.任期を10年に伸長することは合理的か?
 上記の通り、役員に変更がない場合でも、一定期間経過毎に再任手続が必要です。
 そして、その度に登記申請が必要であり、コストと手間を要します。
 役員再任及びそれに伴う登記手続であれば、それほど複雑な手続ではないので、自社で行う会社も近年は多くなっています。
 但し、その場合であっても、株主総会開催にかかるコスト(会場の設営・招集通知発送費用・準備に要する時間)及び登記申請時に法務局に支払う登録免許税は常にかかります。
 役員の任期を伸長した場合、再任回数が減少しますので、上記コストも削減されます。
 よって、役員の変更が少ない中小企業や同族会社であれば、任期を10年に伸長することも検討の余地があるかと思います。
 しかし、当方としては、コスト削減につながるからといって、安易に役員の任期を伸長することはお勧めしません。

 10年は通常の感覚からすれば相当な長期間です。その間に何も会社に変化がないということはおよそ考えにくいと思います。
 会社の企業規模が劇的に変化することがなかったとしても、当初役員として迎え入れた方とそりが合わなくなり、仲たがいする程度のことはあるかと思います。
 確かに、その場合であっても、株主総会の決議で任期満了前に役員を解任することができます。
 ですが、背任行為等正当な事由なく役員を解任した場合、解任された当該役員は、会社に対して、解任によって生じた損害の賠償を請求することが可能です(会社法339条)。
 解任によって生じた損害とは、本来の任期満了時までの報酬相当額です。
 つまり、任期を長くすると、辞めてもらいたい役員が出てきたときに、正当な理由がない限り解任し辛くなるのです。
 任期を伸長するときは、この点もふまえて検討してください。
 余程の同族企業でない限り、10年の任期は長すぎると考えます。
 一方で、外部役員を招聘する予定が無い会社であれば、取締役の任期を、監査役と同様に4年に伸長することは宜しいかと考えます。取締役の任期を4年に伸長しただけでも、再任コストは半額になります。

4.まとめ
 上記の通り、単純に表面的なコストだけを重視して任期を変更することは、会社運営上非常に危険です。
 任期変更を検討されている会社は、司法書士である当方に是非ご相談ください。
 次回は、「取締役会開催の基本~決議事項に利害が対立する取締役の取締役会での対応」を予定しています。

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