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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい労働条件の変更に関するルール

経営が苦しくなってくると、
給与カットに代表される労働条件の引き下げを
検討する可能性が高くなります。

そこで、労働条件の引き下げに関する
労働法の規定についてまとめてみました。

なお、労働条件の引下げ等を行う場合には、

法令等で定められた手続き等を遵守するとともに、
事前に十分な労使間での話合いなどを行うことが必要です。

1 合意による変更

労働契約の変更は、労働者と使用者の
合意により行うのが原則です。
(労働契約法第3条)

労働者と使用者が合意すれば、
労働条件を変更することができます。
(労働契約法第8条)

2 就業規則による変更

使用者が一方的に就業規則を変更して、
労働者の不利益に
労働条件を変更することはできません。
就業規則によって労働条件を変更する場合には、
内容が合理的であることと、
労働者に周知させることが必要です。

【法令】

使用者が一方的に就業規則を変更して、
労働者の不利益に
労働条件を変更することはできません。
(労働契約法第9条)

使用者が、就業規則の変更によって
労働条件を変更する場合には、
次のことが必要です。
(労働契約法第10条)

 1 その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。
    ・ 労働者の受ける不利益の程度
    ・ 労働条件の変更の必要性
    ・ 変更後の就業規則の内容の相当性
    ・ 労働組合等との交渉の状況
 2 労働者に変更後の就業規則を周知させること。

就業規則の作成や変更にあたっては、
事業場に、労働者の過半数で組織する
労働組合がある場合はその労働組合、
労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は
労働者の過半数を代表する者の意見を
聴かなければなりません。(労働基準法第90条)

参考:労働契約法

労働契約法は、労働契約の基本的なルールを定めています。
罰則はありませんが、解雇等に関して、
民法の権利濫用法理を当てはめた場合の判断の基準など、
私法上の効果を明確化するものです。
民事裁判や労働審判は、
労働契約法の規定を踏まえて行われます。

3 配置転換・出向

A 配置転換

配置転換を命じるには、就業規則等にその根拠を
置いていただくことが望まれます。
裁判例によれば、配置転換命令の業務上の必要性と
その命令がもたらす労働者の生活上の
不利益とを比較衡量し、
権利濫用に当たるかどうか
判断される場合があるとされています。

【法令】

事業主は、従業員に就業場所の変更を伴う
配置の変更を行おうとする場合に、
その就業場所の変更によって
子育てや介護が困難になる従業員がいるときは、
当該従業員の子育てや介護の状況に
配慮しなければなりません。
(育児・介護休業法第26条)

【裁判例】

転勤命令について、業務上の必要性がない場合
または業務上の必要性がある場合であっても、
他の不当な動機・目的から転勤命令がなされたとき、
もしくは転勤命令が労働者に対し
通常受け入れるべき程度を著しく超える
不利益を負わせるものであるときには、
その転勤命令は権利の濫用になる。
(最高裁第二小法廷 昭和61年7月14日判決)

B 出向

(在籍)出向を命じるには、
個別的な同意を得るか、
または出向先での賃金・労働条件、
出向の期間、復帰の仕方などが
就業規則等によって
労働者の利益に配慮して
整備されている必要があります。
出向の命令が、その必要性、
対象労働者の選定等に係る
事情等に照らしてその権利を
濫用したものと認められる場合には、
その命令は無効となります。
(労働契約法第14条)

転籍については、労働者本人の同意(合意)を要するので、
使用者は一方的に労働者に転籍を命じることはできません。

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配置転換・転勤命令が無効となる場合ってあるの?

原則的には、勤務地限定採用、職種限定採用でない限り、
配置転換や転勤命令は有効となります。

ただ、次の場合は、配置転換や転勤命令権の濫用とされ、
その命令は無効とされます。

1 業務上の必要性がない

一番イメージがしやすいのは、退職を促すための嫌がらせとしての
配置転換・転勤命令です。

2 合理的理由がない

例えば、退職勧奨を拒絶したことへの報復措置としての命令や、
結婚・出産を理由としてなされた命令です。
(昭和47年8月24日 横浜地裁判決 東洋鋼鈑事件)

3 労働条件が著しく低下する

配置転換や転勤命令によって給与額が
日常生活に影響を与えるほどに減額となる場合等が該当します。
(昭和34年3月14日 和歌山地裁判決 和歌山パイル織物事件)

4 職種・勤務場所について合理的な予想範囲を著しく超える

入社時の労働契約を締結した際の事情、これまでの社内慣行、
配置転換による新旧職務間の差等を総合的に判断して、
合理的な予想範囲を超えている場合が該当します。
(昭和48年12月18日 大阪地裁判決 名村造船所事件)

5 技術・技能等の著しい低下となる

特に技術系、職人系の従業員については、
それらの技術・技能の成長を著しく阻害するような
職種の変更等は配置転換権の濫用とされます。
(昭和47年10月23日 名古屋地裁判決 三井東圧化学事件)

6 私生活に著しい不利益が生じる

原則としては、私生活は会社がよくも悪くも立ち入ることではありませんので、
配置転換や転勤によって私生活が不便になる・不利益を被ると
従業員が主張しても、それを理由に
配置転換・転勤命令権が無効になるわけではありません。

ただし、これらの不便さ・不利益さが通常予想される範囲を超えて、
極めて著しいレベルである場合は、正当な拒否理由となるとされています。
(昭和43年8月31日 東京地裁判決 日本電気事件)

7 不当労働行為に該当する

  労働組合法第7条第1号・第3号違反となります。

8 思想・信条その他差別待遇に当たる

  労働基準法第3条違反となります。

大半の項目に共通して言えるのは
「著しい」ってどのくらい?という疑問です。

会社と従業員間でトラブルになると、こうした点が争点となり、
裁判で決着をつけるということになります。

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会社は、なぜ配置転換や転勤を命じることができるのですか?

会社が配置転換や転勤を会社が命じることの法的な根拠ってどこにあるのでしょうか?

そもそも、配置転換とは労働の種類が変わることであり、
転勤とは勤務場所が変わることです。

労働の種類については、
従事すべき職務の範囲(業務内容)もしくは職種(仕事の種類)は
労働契約の内容の一部を構成しており、
その変更は労働条件に影響を及ぼすことから、
法的根拠が必要です。
(昭和48年9月11日 大阪地裁判決 日本触媒化学工場事件等)

勤務場所については、
従業員の生活にも大きく影響を与えることから、
賃金や労働時間などとともに重要な労働条件に当たり、
労働契約の要素の一つであると位置づけられています。
(昭和44年7月10日 大阪地裁判決 日本生命事件等)

以上により、配置転換による労働の種類の変更、
転勤による勤務場所の変更ともに、
労働契約の要素であることから、
労働契約上の根拠が必要とされています。

一般には、労働契約というものは、
従業員が提供する労働力をどのように活用するかについて、
包括的に会社に委ねることを内容とするものであり、
個々の具体的労働を直接約束するものではありません。

会社は、従業員が行うべき労働の種類、態様、勤務場所等について
決定する権限を持っています。
したがって、会社が業務上の必要から従業員に転勤や配置転換を命ずることは、
原則として問題ないとされています。
(昭和42年7月21日 熊本地裁八代支部判決 三楽オーシャン事件、日本生命事件等)

本来ならば、個々の契約において
「会社は従業員に転勤を命じ、従業員はこれに応じなければならない」
とする旨を就業規則等で定めることが必要です。

昭和50年5月7日の日本コロムビア事件(東京地裁判決)の判決でも
就業規則に「業務上の都合で転勤、配置転換を命ずることがある」旨の規定があれば
会社が従業員に転勤や配置転換を命ずる権限を持つことを
より強く主張できると判示しています。

それでは、こうした就業規則上の明示がない場合はどうなるでしょうか?

黙示的、包括的にこのような権限が付与されていると考えられる場合であれば、
従業員は就業規則上の明示がないことを理由に
配置転換や転勤を拒否することはできないとされています。

ただ、裁判ともなれば「黙示的、包括的に権限が付与されていた」ことを
証明する必要が生じます。

このような面倒なことになるくらいなら、
就業規則を作成し、労働契約上の明確な根拠とした方がよいでしょう。

なお、職種限定採用、勤務地限定採用であることを明確にして採用した場合は、
会社が一方的に配置転換や転勤命令を下すことはできず、
双方の合意が必要です。
(昭和43年4月24日 東京高裁判決 日野自動車事件)

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